「あら、いらっしゃい。でもごめんなさいね、今日のラストオーダーは終わってるの。また明日にでも……」
「ううん、ちょっと待ってなさい。店長に相談してみるから。そんな疲れた顔でがっかりされちゃったら無下にできないわよ。そこのカウンターにでも座ってて。すぐ戻るから」
「はい、お待たせ。店長も帰るそうだし、ラストオーダーも過ぎてお客さんも来ないから。ちょっとだけ静かかもしれないけれど……さぁ、何を飲むのかしら?」
「ちょっと来るのが遅くなったくらいで、そんなに申し訳ない申し訳ないって頭を下げないの。本当にダメなら断ってるんだから。こんな時間までお仕事しちゃって疲れてるんだから。弱めのお酒でいいわよね?」
「酔って忘れられるくらい強いお酒の方がいい、だなんて。そんなヤケ酒みたいなことがしたいなら、もっと騒がしい居酒屋とかにでも行きなさいな。ちゃんと話くらいなら聞いてあげるから。どうせその調子だと明日もお仕事があるんでしょう?」
「そうそう。ちゃんと冷静に考えれば分かることなんだから。しっかりしなさいな。それで、どうしてそんなに忙しくなっちゃったの? お姉さんに話してみなさいよ」
「うん……うんうん、随分と大変なことになってしまったのね。それでも、責任感があって偉いわね。ちゃんと投げ出さないで、やり遂げようとしてるんだから。ちょっとだけ、不器用かもしれないけれどね」
「でも、自分で頑張るだけじゃ限界があるんだから、ちゃんと周りを頼ることも覚えたらいいんじゃないかしら」
「ちゃんと見えてるって? 冗談はよしなさいな。今日ラストオーダーの時間を過ぎてるのにここにきてしまった悪い子は、どこの誰だったかしら?」
「ふふっ、そんな露骨に落ち込まなくてもいいの。今日はたまたま人が少なったから、ラストオーダーの時間ですぐに閉めようとしてただけで、いつもはこの時間でもオーダー取ってること、キミも知ってたわよね」
「でも、確認してから来ることだってできたわけだから、やっぱり周りを見渡すことを少しだけ疎かにしてるんじゃないかしら? 明日からも忙しいんだろうから、今日はそれを飲んだらすぐに帰って休みなさい?」
「そんな残念そうな顔をしないの。明日からだって暑い天気が続くんだから、そんなことでバテちゃったら、折角頑張ってるのに全部無駄にしちゃうわよ?」
「ちゃんと、お仕事が片付いたら、部下も上司も誘って遊びに来なさいな。サービスしてあげるから」
「ありがとうって、そんな頭まで下げちゃって。頭を回すと酔いもすぐ回っちゃうわよ? ほんと、そういうところは律儀というか、礼儀正しいんだから」
「はい、今日はもう帰った帰った。お会計も、ゆっくり来れる時でいいから。ほぉら、早く帰って少しでもお休みなさいな」
「よろしい、いいお返事ね。今度ゆっくりお話しできるときに、また来るのよ。いってらっしゃい」